ありません。

 「ありません。」と。

長考の末に、のどから言葉が出かかった。

挑戦者が敗北を認めてしまえば、全ての緊張の糸がほぐれるのだろう。

こう考えてしまったのも、いい次の手が浮かばなかったのが原因だ。

 相手は、明日の一限のテスト。

全く良い手が思いつかない。借りてきた本もまったく役に立たず、必修じゃないので、降りようと思えばいつでも降りられる。

 その状況の中で、テスト前日まで勉強してきたのに、ここでの投了は正直きつい。

 眠気も襲ってきた、投了するのも時間の問題のような気がしてきた。